~ トー・ラム書記長の指導の下で進む改革と発展への挑戦 ~
2025年は、ベトナム経済にとって大きな転換点となる年である。制度改革や行政機構の再編、さらには成長モデルの転換を柱とする包括的な改革が本格的に進められ、国は新たな発展段階へと歩みを進めている。
世界経済を取り巻く環境は依然として厳しい。地政学的対立の深刻化や保護主義的な貿易政策の広がり、長引くインフレ圧力に加え、世界的な消費需要の低迷など、不確実性は高まっている。しかし、こうした状況の中でも、ベトナムは高い経済成長目標を維持するとともに、マクロ経済の安定確保に向けた取り組みを着実に進めている。

マクロ経済の安定から持続的成長の実現へ
トー・ラム書記長の指導の下、ベトナムでは新たな発展戦略が推進されている。その柱となるのは、制度改革やイノベーションの促進、民間経済の活性化、そして国家競争力の向上を通じた持続的な高成長の実現である。

近年の政策運営で特徴的なのは、「管理」を重視する従来型の発想から、「発展を促進する」発想への転換だ。行政主導による資源配分に依存するのではなく、市場メカニズムを活用しながら社会全体の資源や活力を引き出す方向へと政策の重点が移されている。
こうした取り組みは、単なるマクロ経済の安定維持にとどまらない。企業や国民、各経済主体が持つ創造性や潜在力を最大限に発揮できる環境を整備し、新たな成長の原動力を生み出すことを目指している。
その考え方は、行政機構改革や行政手続きの簡素化、民間経済の発展支援、科学技術・イノベーションの推進、さらにはデジタル・トランスフォーメーション(DX)の加速といった一連の政策にも反映されている。
ベトナム経済はこれまで、豊富な労働力と外国直接投資(FDI)の流入を主要な成長要因としてきた。しかし現在は、生産性の向上や技術革新、制度の高度化を成長の原動力とする新たな発展モデルへの転換が進められている。
その成果は徐々に表れつつある。世界経済の先行きに不透明感が残る中でも、ベトナム経済は堅調な成長を維持している。2025年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は6.93%となり、2020年以降の第1四半期として最高水準を記録した。さらに、2025年上半期のGDP成長率は約7.52%に達したと見込まれており、インフレ率も比較的低い水準で推移していることから、成長を支える政策運営の余地が確保されている。
こうした成果は、ベトナムが中長期的な発展目標の実現に向けて基盤を強化していることを示すものといえる。
行政機構改革と経済活性化への期待
現指導部による改革の大きな特徴の一つが、行政機構の効率化と運営能力の向上である。
トー・ラム書記長は2024年末以降の演説や指示を通じて、制度上の障壁の解消や行政手続きの簡素化、中間的な行政プロセスの削減の重要性を繰り返し強調してきた。また、従来の管理中心型の行政から脱却し、国民や企業の活動を支援するサービス志向の行政体制の構築を目指す姿勢を示している。

経済面では、行政機構改革によって主に三つの効果が期待されている。
第一に、企業が負担する行政コストの削減である。第二に、投資や土地利用、建設、事業活動に関する各種手続きの迅速化である。第三に、行政運営の透明性向上を通じて、非公式なコストが発生するリスクを低減することである。
こうした改革は、経済の生産性向上に重要な役割を果たす全要素生産性(TFP=Total Factor Productivity)の改善につながると期待されており、中長期的な持続可能な成長を支える基盤となる。
第68号決議、民間経済発展の転換点に
2025年のベトナム経済政策を象徴する取り組みの一つとして挙げられるのが、政治局が発表した「民間経済発展に関する第68号決議(68-NQ/TW)」である。
同決議は、民間経済を「国家経済の重要な原動力の一つ」と位置付けるとともに、民間企業部門が経済成長やイノベーション、国際経済への統合を牽引する中核的な役割を担うことを目指している。
ベトナムではこれまで、民間経済の役割拡大が段階的に進められてきたが、第68号決議はその位置付けをさらに明確化し、民間部門の発展を国家戦略の重要な柱として打ち出した点で大きな意義を持つと評価されている。

ドイモイ(刷新)政策開始から約40年が経過した現在、民間経済部門には約94万社の企業と500万を超える個人事業者が存在し、国内総生産(GDP)の約50%、国家予算歳入の30%超を担うとともに、労働力人口の約82%に雇用を提供している。
特に注目すべき点は、第68号決議が民間経済の役割を確認するだけでなく、以下のような画期的な施策を打ち出していることである。
- 財産権および営業の自由の保護
- 土地および融資へのアクセス拡大
- イノベーションとデジタル・トランスフォーメーションの推進
- グリーン転換の促進
- 市場参入障壁の撤廃
- あらゆる経済部門に対する公平な競争環境の整備
多くの専門家は、この決議を、ベトナムがドイモイ路線を採用して以来、民間企業部門に対する最も包括的かつ大胆な改革を打ち出した政策の一つであると評価している。
科学技術とデジタル変革:新たな成長エンジン
制度改革や民間経済の発展と並行して、科学技術、イノベーション、そしてデジタル変革は、ベトナム経済の新たな成長エンジンとして位置付けられている。
第4次産業革命が世界的に急速に進展する中、ベトナムはデジタル経済、デジタル社会、そしてデジタル政府の構築を加速させている。人工知能(AI)、ビッグデータ(Big Data)、クラウドコンピューティング、国家データセンター、半導体産業、さらにはイノベーション・エコシステムの発展を推進することで、労働生産性および国家競争力の飛躍的向上が期待されている。

ドイモイ(刷新)政策の開始から約40年が経過した現在、ベトナムの民間経済部門は大きく成長している。民間企業数は約94万社に達し、500万を超える個人事業者とともに、国内総生産(GDP)の約50%、国家予算歳入の30%超を担っている。また、労働力人口の約82%に雇用を提供するなど、経済・社会の発展において重要な役割を果たしている。
第68号決議の特徴は、民間経済の重要性を改めて確認するだけでなく、その発展を後押しするための具体的な制度改革の方向性を打ち出した点にある。
具体的には、財産権と営業の自由の保護を強化するとともに、企業による土地や資金へのアクセス改善を図る。また、イノベーションやデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進、グリーン転換への支援、市場参入障壁の見直しなどを通じて、あらゆる経済主体が公平な条件の下で競争できる環境整備を目指している。
こうした内容について、多くの専門家は、ドイモイ政策開始以来の民間企業支援策の中でも、特に包括的かつ踏み込んだ改革の方向性を示したものと評価している。
科学技術とデジタル変革、新たな成長エンジンに
制度改革や民間経済の活性化と並び、科学技術、イノベーション、デジタル変革は、ベトナム経済の新たな成長を支える重要な柱として位置付けられている。
第4次産業革命の進展を背景に、ベトナムではデジタル経済、デジタル社会、デジタル政府の構築に向けた取り組みが加速している。人工知能(AI)やビッグデータ、クラウドコンピューティング、国家データ基盤の整備に加え、半導体産業やスタートアップを含むイノベーション・エコシステムの発展にも力を入れている。
こうした取り組みを通じて、労働生産性の向上や産業の高度化を促進し、中長期的な国家競争力の強化につなげることが期待されている。

公共投資は引き続き経済成長の「牽引役」
制度改革と並行して、公共投資は依然として経済成長を支える主要な原動力の一つと位置付けられている。
南北高速道路、Long Thanh International Airport(ロンタイン国際空港)、港湾・物流システムなどの大規模インフラプロジェクトは、引き続き建設・整備が加速されている。

2025年1〜5月の公共投資実行額は2,210兆ドンを超え、前年同期比で約17.5%増加した。公共投資の着実な執行は、短期的には内需の下支えにつながるほか、中長期的にはインフラ整備を通じて国家競争力の向上を後押しする役割が期待されている。
また、近年の特徴として、公共投資を単独で拡大するのではなく、民間資本との連携を重視する姿勢が鮮明になっている。官民連携を通じて投資効果を高め、経済全体への波及効果を促すことが狙いだ。
次世代FDIの誘致に重点
ベトナムは引き続き、アジア太平洋地域における有力な投資先の一つとして国際的な投資家の関心を集めている。2025年も外国直接投資(FDI)の流入は堅調に推移しており、加工・製造業をはじめ、ハイテク産業、クリーンエネルギー、戦略インフラ、デジタル経済関連分野への投資が活発化している。
FDI部門は現在、ベトナムの国内総生産(GDP)の約20%を生み出し、輸出総額の70%以上を占めるなど、経済成長において重要な役割を担っている。また、多くの雇用創出にも寄与している。
一方で、FDI誘致政策の重点は大きく変化している。これまでのように投資件数や登録資本額の拡大を重視するのではなく、技術移転や高付加価値化につながる「質の高い投資」の誘致へと軸足を移している。
具体的には、半導体や人工知能(AI)、データセンター、グリーンテクノロジー、研究開発(R&D)などの先端分野を重点対象としている。
世界的なサプライチェーン再編が進む中、主要なテクノロジー企業によるベトナムへの投資も拡大している。Samsung Electronicsは大規模な生産拠点と研究開発(R&D)センターを運営しており、引き続きベトナム最大級の外国投資企業となっている。Intelは半導体の組立・検査事業を拡大し、Amkor Technologyも半導体パッケージング分野への投資を進めている。
さらに、[NVIDIA]はAI分野や高度人材育成に関する協力を拡大しており、LG Electronicsも電子機器や先端技術製品の生産能力増強を進めている。

これらの投資は資本流入にとどまらず、技術移転や人材育成、国内産業の高度化にも寄与している。ベトナム政府は近年、単なるFDI誘致から、国内企業と外国企業の連携強化へと政策の重点を移しており、サプライチェーンへの参画拡大や付加価値向上を目指している。
課題もなお残る
一方で、ベトナム経済には依然として課題も残されている。輸出依存度の高さに加え、労働生産性の向上や成長モデルの高度化が求められている。また、不動産市場の安定化、人材育成、技術革新の促進なども重要な課題となっている。
新たな発展段階へ
ベトナムでは現在、制度改革や行政改革、民間経済の活性化を軸とした成長戦略が進められている。世界経済の不確実性が続く中でも、こうした改革の成果が着実に現れつつあり、中長期的な成長への期待が高まっている。
1986年のドイモイ(刷新)政策が市場経済化の基盤を築いたとすれば、現在の改革は次の発展段階に向けた取り組みと位置付けられる。ベトナムは改革とイノベーションを成長の原動力としながら、2045年の高所得国入りに向けた歩みを進めている。